カタルーニャ独立住民投票当日

 今日はカタルーニャの住民投票です。昨夜10時には今までのお鍋を叩いて音を出し、抵抗を示すのではなく、宇宙に向けて点灯して、その光をNASAに気づかせようという、ロマンチックな行動をしました。どんな衛星写真になるか楽しみですですね。

 日本にもいくつかの報道が入っているようですが、現地から見て感じたことをお知らせして、より皆さんが見ることができる報道に親しみを持ってもらえればと思います。

 独立運動の内容に関しては、TBSの報道がそのプレゼンも含め非常に優秀でしたので、そちらを見てもらえればほぼ理解できると思います。内容はどちらからいうと独立運動寄りのように見えます。地元でもこのNewsは取り扱い時間の長さとプレゼン方法に良い評価を得ているようです。

 私はバルセロナに住んでいますので、どうしても独立派の影響を受けていますが、外部者として色々と見た事実があります。これをお伝えできればと思います。

 まず、TBSの報道でサッカーと独立運動がmixされて報道されていますが、これは残念なことです。歴史的にいうとエスパニョールというチームがカタラン人によって作られました。その一方バルサはそうではありません。現在はバルサは独立運動寄りの姿勢を見せていますが、以前はそうでなかったことを考慮する必要があります。また独立反対派の理論だった意見を聞きたかったです。違憲だからダメというのではなく、もっと深い意見です。この国の違憲や違法というコンセプトは、権力者が自由に利用するので、形式を整えるのは正しいのですが、実情に沿っていません。汚職が多いのに、政治家が違法というと、なんだか全てが嘘っぽく思えます。理論だった意見を双方から聞くと、少しこの独立運動の意味が理解できるでしょう。

 スペインを旅したり、出張すると、カタルーニャから来たことで「指を指される」ことがあります。要するに嫌い物扱いです。それは脳みそを混乱させるだけでなく、寂しさを実感させます。そんなことはないという人は、よくわかっていないだけです。友人家族が旅行して、カタラン語で話すのに躊躇する場合があるとの話を聞きますが、本当のことです。これは何を意味しているのかというと、そのようなイメージを中央政府やメデイアが作って来たことに起因しているのです。こちらのメディアの特徴は、中立報道ではなくて、それそれの考え方を通した事実ですでの、メデイアによっては大きく内容が変わったり、中央政府寄りの報道になります。それは日本以上です。国会の審議では政府が、政府の言う通りに報道しない場合は、広告費をカットすると公言したりしていますね。また現行の首相は、以前野党だった時に、独立を問う住民投票をすべきと、国会で言っています。こちらの国会答弁は日本人の見方からすると、「激しいくらいの対立」が基本姿勢です。「相手の話をよく聞く」という姿勢は、こちらでは弱者のようにまで思えます。与野党のTV討論会では、意見交換はなく、お互い言いたいことを言って終了です。この文化背景を理解していないと、住民感情を理解できないでしょう。

 車で旅をすると、なぜかカタルーニャの高速道路が有料で、他の地域のとても立派な高速は無料です。空港投資にしても中央政府が決めます。バルセロナ空港は「マドリットに比較すると大変遅く整備されています。その一方、予算の自由があるバスク地方に行くと、なんでこんなに立派な公共設備なの」と驚くことがあります。豊かさを感じるのです。カタルーニャの納める税金配分は圧倒的にカタルーニャに不利で、スペインの他の州に配布されています。ある地方では労働人口の40%が公務員だったり、半年だけ働いて、残りは失業保険をもらって生活している地方もあります。それらの原資は中央政府が集める税収です。その上、カタルーニャ地方に指を指したりするのです。となると、カタルーニャの人々は不満を持つわけです。これは良くない状況ですね。カツアゲされ続けたいじめっ子が、もう我慢できないと、盾をついたわけです。

 3年前に一度中央政府は、税金の配分に関しネゴをすると約束しましたが、それを反故にしています。最近の話題は現首相がそのことを放置したためにこのような事態になったと、今回の住民投票の戦犯探しの候補になっています。現行政府は独裁者フランコ時代の影響を受けている政党によるものです。汚職問題はここでは一般的なことですが、同政党は難しい立場に置かれています。また同首相は野党時代に当時の与党に対して、住民投票賛成を表明しています。ですので、全てが混乱しています。民主主義は選挙で勝利が全てですので、投票を得るための約束や発言をするわけです。「年金保証」「減税」は得票のためのキーワードで、税収の大きな地方より、投票人口がより多い向きの政治活動になるわけです。

 直近まで暴力を避けるための努力を双方して来てたと思います


道路閉鎖をした住民を警察が排除しているが、結局諦めて撤退(警察(私服)の判断がよかったと思います)

警察の介入を市民がブロック。暴力なしで、結局警察側は撤退



朝5時過ぎの投票場(学校)に集まって、警察の介入を阻止しようする市民

 がやはり投票日には様々なイメージが出て来ました。朝は投票所にいた一般市民の排除から始まり、投票システムの妨害があったりでしたが、とうとうこの事件が発生し、ソーシャル・メディアで拡散しつつあります。
投票箱を回収する警察


投票所に止まっている人に蹴りを入れて排除する警察

 平和的解決を求めて来た市民にとって、これらのイメージはインパクトがあるでしょう。FBでも今まで中立や、政治的なコメントを避けてきた友人たちも、「もういい加減にしろ!」と怒っています。

 今までの投票では独立派が投票するというパターンでしたので、当然独立派勝利になるわけです。このような事件が起きる、感情的な投票が増えるので、無効投票者、非投票者が賛成に投票する可能性が大きくなりました。こうなるといくら中央政府が違憲と言っても、もう歯止めが効かないと思います。三権独立ということを習ったと思いますが、ここでは中央政府の影響が全てに影響していることを、皆さん理解してもらうと、意味がわかると思います。

 平和に解決する手段はあるのか?
 あると思います。人々が求めているのは、尊敬と自立です。まずそこに立ち戻る必要があります。その上で経済的なネゴを始めることですね。となると現状では現行首相の退陣が必要になります。今晩のNewsでは事実がさらに出てくるので、可能性は捨て切れませんね。実は約1ヶ月前程に事態を丸く納める機会があったのです。それはバルセロナで起きたテロ事件でした。あの機会を上手に活用できなかったのは、非常に残念でした。国(組織)には団結が必要です。団結のためには価値観の共有が必要なわけで、テロへの反対は誰もが共有する価値観でした。が首相のスピーチは非魅力的で、あの時点でもう平和的解決はないとみんなが確信したのではないでしょうか。

 今この内容を読み返してみると、やはりカタルーニャ独立を応援しているように思えてしまう文になっていますね。本当に伝えたかったのは、2つのことで、

  1. 現行政府のままではここの人は幸せになれそうもないということ
  2. カタルーニャには賛成派だけでなく多くの反対派もいる

ということです。ですので民意を正す機会があって良いはずなのに、このような事態になったのは、やはり残念としか言いようがありません。もうこれ以上の暴力がありませんように。

コメント